桶屋とシフティング

「風が吹けば桶屋がもうかる」とはよく聞くことわざですよね。でもなぜ風が吹くと、桶屋が儲かるのかご存知でしょうか?

 

それはこの様な理屈です。 

強く風が吹けば土ぼこりが舞い、目に入った人は目が悪くなり失明する人が増えます。
昔、目が見えない人は芸で生計を立てたりしたものだから、三味線の需要が増えます。
三味線には猫の皮を使っていたものだから、猫が減少、そして猫が捕食していたネズミが闊歩します。
ネズミが増えるとネズミは桶をかじることから、世間の桶が使い物にならなくなり、桶屋が儲かるという理屈なのです。

もはや屁理屈とも言えますが、 何気なく使っていることわざの語源を探ってみると面白いものが多くあります。

なるほどと思うようなことわざを300以上集めたアプリを作りましたので良かったら使ってみてください。

 

 っと、ことわざのアプリの宣伝をしたかったのではないのです。

コントラバスのシフティングの話です。

弦楽器でうまく弾けない箇所が出てきた場合、その原因そのものから離れた他のところに原因を探っていくと解決することが多いと耳にすることがあります。

 

こんな悩みがありました。

曲を弾いていると弓が暴れてぼよよ~んとなってしまう。どうも安定しない。ボウイングに原因があるのだと右手を疑う。一生懸命移弦の練習をしたり、弓を真っ直ぐに弾くことを意識したり、脱力を意識したり。でも直らない。いつも同じ箇所でぼよよ〜ん。

自分はぼよよ〜んの天才なのだと思うようになり、そしていつのまにか問題と向き合わなくなっていました。

 

先日ようやく問題と向き合い、ぼよよ〜んの原因を探るために超スローモーションで弾いてみました。メトロノームの設定にないほどの超スローモーションでなければ意味がありません。自分がどのように、どういう方向で力を入れているのか分かるくらいにゆっくり弾きます。

 

するとポジション移動のときに楽器が揺れてしまっていることに気がつきました。これでは弦にかける弓圧が一定しないわけです。つまりシフティングがうまくできていないと仰っているのです。

シフティングのアプリまで作って一生懸命練習してきたのになぜだー!そんなはずは無い!

でも現実にシフティングがぎこちなかったのです。(T^T)

 

なぜシフティングがうまくできないのだろうかと、右手の動きや力加減を観察してみました。すると親指に力が入っていることに気づきました。そして弦を強く押さえこんでしまっているために摩擦が大きくてスムーズに移動できていなかったのです。

親指の力を抜きたいのですが、力を抜けば今度は弦が押さえられなくなります。親指先生は良かれと思って力を入れてくれているのです。どうしたら親指先生を楽にしてあげられるだろうかと考えてみました。

楽器の構えかたや傾け方、楽器の高さなどを見直してみます。そもそも弦を抑えるときにそんな大きな力がいるのだろうかと疑ってみます。ハイポジションでは親指の力を使わずに抑えられてるのだから、親指の力無しでも弦を押さえられる筈です。ハイポジションの押弦方法をローポジションでも出来ないかなと考えたりしました。そうすると親指は浅めの位置、つまりG線の裏側にいて、腕を上げてネックを包み込むようにすると楽なことが分かりました。また、指を脱力し切った状態からだんだんと弦を押さえていき、やっと音が出る程度の最小限の力を確認してみます。思っている以上に力が必要ないことがわかりました。シフティングはグリッサンド音を聴かせることが目的ではない筈なので、弦をそこまで強く押さえる必要も無いことに気づきました。目指すポジションの位置に辿り着いた瞬間にちょっと押弦の圧力をかかるだけで良い訳です。

 

この様な事を考え意識しながら超スローモーションでシフティング練習をしているうちに妥当なフォーム、力加減になりスムーズにシフティング出来るようになってきました。まだまだ確実ではありませんが、だいぶ力を必要としない押弦とシフティングが出来るようになり呼吸も楽になりました。コントラバスの構え、傾き、高さ、親指の位置、手首の具合や最小限の力加減などなど様々な要素が桶屋のことわざの様に連鎖してぼよよ〜んと発音してしまっている訳でした。

 

原因を辿っていくと思わぬところに落とし穴があります。しかしそれを解決すれば一気に他の部分でも良い演奏になっていることがあり、それはまるで数独の中盤で一気に紐解けた様な爽快感です。

上手くいかない原因を一つや二つ前にあると決めつけず、とことんさかのぼる気構えが必要なのだなと学習した話でした。